「なすは栄養がない」というイメージを持つ方もいますが、実際は健康に役立つ栄養が豊富に含まれた野菜です。
この記事では、
・なすの栄養素や期待できる健康効果
・ダイエット時の役立て方
・調理法やアレルギーなどの注意点
について詳しく解説します。
なすには栄養がないと見られがちですが、その理由には見た目や味、水分量が関係しています。
なすの表面は淡い紫で断面も白く、あっさりした味のため、にんじんやブロッコリーのようなインパクトのある緑黄色野菜と比較すると栄養が豊富に感じにくいからです。
また、約94%※1が水分であるため、栄養価が低い印象を与えやすいのです。
しかし実際には、カリウムやカルシウム、ビタミン類、食物繊維、さらにポリフェノールの一種であるナスニンなど、さまざまな健康成分が含まれています。
ここからは、なすを食べることによって得られる具体的な健康効果について詳しく解説します。
※参照1/食品データベース
ここからは、なすを食べることで得られる主な健康効果を紹介していきます。
なすの色素成分であるナスニンは、強力な抗酸化作用があり、細胞の酸化を防いで免疫力を向上させるため、風邪や病気の予防に役立ちます。
また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や老化の予防効果も期待できるため、健康維持に心強い栄養素となっています。※2
※参照2/独立行政法人農畜産業振興機構
なすに豊富に含まれるカリウムは、体内に溜まった塩分を体外に排出し、むくみ解消や高血圧を予防してくれる働きがあります。※3
そのため、塩分量の多い食生活を送っている方は、積極的にカリウムが含まれた食品を摂取するのが良いとされています。
※参照3/全国健康保険協会|高血圧・むくみでお悩みの方は大注目!!「カリウム」(令和5年5月)
なすに含まれるβカロテンは、体内に入るとビタミンAに変換されます。
ビタミンAは目の健康に役立つとされており、視力の維持や回復効果が期待できます。
前章では、なすに含まれる栄養素や健康効果について解説しましたが、ここからは、各栄養素の働きや効能効果について詳しく説明していきます。
なす1本(100gあたり)には、220mgのカリウムが含まれています。※4
カリウムは、血圧の調整や体内のナトリウムの排出を促すことで、余分なナトリウムを尿として体外へ排出し、血圧上昇を防ぐ効果が期待されています。※5
ナトリウムとは、主に食塩(塩化ナトリウム)として摂取される必須ミネラルであり、体内の水分バランスを維持するために必要な栄養素ですが、過剰摂取は血圧上昇の原因となります。※6
2020年の日本人の食事摂取基準では、生活習慣病予防を目的としたカリウムの1日の推奨摂取量を、男性3000㎎、女性2600㎎以上としています。
しかし、実際には30~49歳男性の1日のカリウム摂取量の中央値は2021㎎、女性は1843㎎と、不足しがちです。※7
特に日本人は、諸外国と比較するとナトリウムの摂取量が多いため、カリウムを積極的に摂取する必要があります。
35歳女性の場合、目標摂取量に対し70%しかカリウムを摂取できていません。
そこで、1日の食事になすを1本加えることで、目標摂取量の80%を摂取できるようになります。
残りの20%はカリウムを豊富に含む食材を取り入れながら上手に補いましょう。
※参照4/食品データベース
※参照5/厚生労働省 e-ヘルスネット|カリウム
※参照6/厚生労働省 e-ヘルスネット|ナトリウム
※参照7/日本人の食事摂取基準(2020年版)
なす1本(100gあたり)には、18mgのカルシウムが含まれています。※8
カルシウムは骨や歯の健康維持に役立ちます。
特に、成長期の子供や高齢者の骨密度維持に重要な栄養素です。
2020年の日本人の食事摂取基準では、生活習慣病予防を目的としたカリウムの1日の推奨摂取量を、30~49歳の男性は738㎎、女性は660㎎以上としています。※9
カルシウムが不足すると、成長期の子どもの骨の発育に障害をきたしたり、高齢者の骨粗鬆症に繋がったりする恐れがあります。
そのため、カルシウムが豊富に含まれる食材を組み合わせて積極的に摂取すると良いでしょう。
※参照8/食品データベース
※参照9/日本人の食事摂取基準(2020年版)
なす1本(100gあたり)には、17mgのマグネシウムが含まれています。※10
マグネシウムは疲労回復や筋肉のけいれん防止に役立ちます。
また、カルシウムやリンと共に骨を支える役割も果たし、ストレス軽減にも効果的です。
2020年の日本人の食事摂取基準では、生活習慣病予防を目的としたマグネシウムの1日の推奨摂取量を、30~49歳男性の場合370㎎、女性290㎎としています。※11
しかし、実際の1日あたりの平均摂取量は247mgであり、男女共に足りていないのが現状です。※12
例えば、マグネシウムの平均摂取量247mgを摂取できている35歳女性の場合、1日になすを2本食事に取り入れることで、マグネシウムの推奨摂取量といわれる290mgの約98%を補えます。
なすは火を通すことでかさが減るため、煮びたしや味噌汁にすると、なす2本分を無理なく摂取することができますよ。
※参照10/食品データベース
※参照11/日本人の食事摂取基準(2020年版)
※参照12/令和元年国民健康・栄養調査報告
なす1本(100gあたり)には、100mgのβ―カロテンが含まれています。※13
前述の通り、β―カロテンは体内でビタミンAに変換され、活性酸素の働きを抑えます。※14
活性酸素とは、呼吸によって取り込まれた酸素の一部が過剰に活性化された状態のことで、細胞を傷つけ、酸化ストレスによる生活習慣病の原因となる場合もあります。※15
2020年の日本人の食事摂取基準では、ビタミンAの1日の推奨摂取量を、30~49歳男性の場合900μg、女性700μgとしています。※16
これに対し、1日あたりの平均摂取量は534.1mgであり、必要量を満たせていない人も多いのが現状です。※17
例えば、35歳女性であれば、なす1本を食事に取り入れることにより、推奨摂取量の約91%を補えます。
※参照13/食品データベース
※参照14/厚生労働省 e-ヘルスネット|抗酸化ビタミン
※参照15/厚生労働省 e-ヘルスネット|活性酸素と酸化ストレス
※参照16/日本人の食事摂取基準(2020年版)
※参照17/令和元年国民健康・栄養調査報告
なす1本(100gあたり)には、32mgの葉酸が含まれています。※18
葉酸は胎児の発育や赤血球の生成に重要であり、特に妊娠中の方にとって欠かせないビタミンです。
赤血球の生成やDNA合成に必要な栄養素で※19、妊娠中の女性は通常よりも多くの葉酸が必要になります。
葉酸には胎児の健全な発育をサポートする働きがあり、不足すると心疾患のリスクが高まり、新生児の神経管閉鎖障害の原因になることも。
その他にも、正常な造血作用や、動脈硬化を予防効果もあるため、性別を問わず意識して摂取しましょう。
18歳以上の男女の葉酸の1日の摂取推奨量は240μgとされており、妊活中や妊娠中の女性は1日480μgの摂取が推奨されています。※20
なすに含まれる葉酸は、造血作用で共に働くビタミンB12や葉酸の働きを強くするビタミンCを含む食材と一緒に摂るとより効果的です。
※参照18/食品データベース
※参照19/最新改訂版 知っておきたい栄養学|監修:栄養学博士 白鳥 早奈英|P97
※参照20/健康長寿ネット|葉酸の働きと1日の摂取量
なすには「ナスニン」、「クロロゲン酸」の2種類のポリフェノールが含まれています。
なすの皮に含まれるポリフェノールは健康効果が高いと言われており、果菜類の中で5番目にポリフェノール含量が多いという特徴もあります。
順位 | 野菜 | ポリフェノール含有量(※21) |
---|---|---|
1 | オクラ | 141 |
2 | さやえんどう | 125 |
3 | さやいんげん | 125 |
4 | ピーマン | 94 |
5 | なす | 74 |
5 | ミニトマト | 74 |
7 | にがうり | 57 |
8 | トマト | 40 |
9 | きゅうり | 36 |
10 | かぼちゃ | 8 |
この2つの成分はどのような働きがあり、どのような健康効果をもたらすのか以下で詳しく解説していきます。
※参照21/野菜の機能性とポリフェノール成分|農林水産省 野菜・茶業試験場 生理生態部 品質解析研究室 主任研究官 東 啓子
ナスニンは、ポリフェノールの一種であるアントシアニン系色素で、抗酸化作用による生活習慣病の予防や細胞の老化防止が期待されています。※22
さらに、ナスニンには脂質過酸化の抑制や総コレステロール低下作用などが研究で明らかになっています。※23
ナスニンの健康効果をまとめると下記の通りです。
・生活習慣病予防
・細胞の老化防止
・有害物質生成の抑制
・脂質過酸化の抑制
・コレステロール低下作用
なお、ナスニンは水溶性のため、長時間水にさらすと栄養が流出してしまいます。
切ったらすぐに調理することで、栄養の流出を防ぎ、酸化による変色を抑えることもできます。※24
※参照22/からだに効く野菜の教科書|著者:本橋登|P16-17
※参照23/ナス果菜外果皮からのナスニンを含む天然色素素材の調製
※参照24/野菜まるごと大図鑑|発行:主婦の友社|P24-25
なすに含まれるクロロゲン酸もポリフェノールの一種です。
強い抗酸化作用があり、生活習慣病全般の予防と改善に効果的とされています。※25
その他にも、クロロゲン酸を摂取すると、脂肪の消費量がアップし、内臓脂肪が低減するともいわれています。※26
クロロゲン酸はアクの成分でもあり、切って時間が経つと断面から変色し始め、えぐみや雑味の原因となります。
そのため、変色や風味の劣化、栄養の流出を防ぐためにも、なすは切ったらすぐに調理がおすすめです。※27
※参照25/色の野菜の栄養辞典|監修:女子栄養大学名誉教授 吉田企世子|P122
※参照26/健康長寿ネット|ポリフェノールの種類と効果と摂取方法
※参照27/野菜まるごと大図鑑|発行:主婦の友社|P24-25
厚生労働省が発表した「健康日本21」によると、1日あたりの野菜摂取目標量を350gとしていて、そのうち淡色野菜は230gが摂取目標量になります。※28
野菜は色で区別した「緑黄色野菜」と「淡色野菜」がありますが、淡色野菜の正式な名称は「その他の野菜」です。
なすは、「その他の野菜」に分類されており、代表的なものにはキャベツ、白菜、レタス、きゅうりなどがあります。
なすを1日に1本取り入れることで、淡色野菜摂取目標量の43%を補えることになります。
なすと、他の淡色野菜を組み合わせ、1日の摂取目標量である230gを意識して摂取しましょう。
※参照28/厚生労働省|「健康日本21」
ここからは、なすの栄養をしっかり摂るための調理法を紹介します。
栄養吸収を高めるコツや、栄養素を逃さないアク抜きの方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
なすは油との相性が良く、揚げたり焼いたりすることで甘味が増し、トロリとした食感になります。
また、なすに多く含まれるカリウム、βカロテンは油を使って調理すると栄養価が増加します。
特に、脂溶性ビタミンのβ-カロテンは油に溶けやすい性質があるため、油を使って調理することで栄養の吸収率が上がるのです。
さらに、高温で調理することでナスニンの損失を減らすメリットもあります。
ただし、吸油率が高く油を使うとカロリーが高くなりがちです。
なすの素揚げや、煮びたしとして食べる場合は、揚げたあとに熱湯をかけると余分な油を減らすことができます。
カロリーを抑えたい方は是非試してみてくださいね。
なすはアク抜きせず、切ったらすぐに調理するとアクから出る雑味やえぐみを気にせずに食べることができます。
通常、アクの強い野菜は水にさらしてアク抜きをしますが、なすは切るとすぐに変色が始まり、栄養成分も流出しやすくなります。
また、油で調理するとアクが抜けやすくなり、旨みが増すという特徴もあります。
これもなすと油の相性が良いといわれる理由の一つです。
どうしてもアク抜きが必要な場合は、水にさっとくぐらせる程度にし、調理直前に行いましょう。
皮にはナスニンやβ―カロテンなどの栄養が詰まっているため、皮ごと調理することで無駄なく栄養を摂取できます。
焼きなすや煮込み料理など皮ごと使用できるレシピを活用して、なすの栄養を有効に取り入れましょう。
なすは低カロリーで脂質も少ないため、ダイエットをしている方にもおすすめの食材です。
ここからは、なすのカロリーやダイエットに取り入れる際のポイントを解説します。
なすは約94%が水分で、1本(100g)あたり18kcalと低カロリーで、脂質も0.1gとごくわずかです。
ダイエットに適した食材ですが、調理法によってはカロリーが増えるため注意が必要です。
以下で、ダイエットに適したなすの調理方法を詳しく説明していきます。
カロリーを抑えるには茹でる調理法が最適ですが、味が淡泊になりがちです。
そこで、少量の油を使うことにより、満腹感を得ることができます。
油は消化や吸収に時間がかかるため、胃腸に留まる時間が長くなるので腹持ちがよくなり満腹感が長続きするといわれています。※29
また、油炒めは天ぷらの約半分のカロリーで、フライドポテトの1/3のカロリーに抑えられるため、ダイエット中の方にも取り入れやすい調理法です。※30
※参照29/植物のチカラ 日清オイリオ|油に関するQ&A
※参照30/食品データベース
なすは栄養豊富でダイエットにもおすすめな食材ですが、なすを摂取するのに気をつけなくてはならない人もいます。
特に、花粉症などのアレルギーを持つ方は注意が必要です。
ここからは、なすを食べたときに起こりやすいアレルギー症状の特徴や注意すべき点について解説します。
口のかゆみや肌への影響が気になる方に向けて、対処法も含めて詳しく説明します。
なすを食べた直後に口の中がかゆくなったり、耳の中がかゆくなったりする場合、口腔アレルギー症候群を発症している可能性があります。
口腔アレルギー症候群の症状は以下のようなものがあります。
・唇、舌、口の中、のどのかゆみやはれ
・鼻水
・鼻づまり
・涙が出る
・目やにが出る
・蕁麻疹
・嘔吐
・下痢
・息苦しさ
口腔アレルギー症候群は、花粉症と深い関連性があり、花粉症をもっている一部の方に見られることがあるといわれています。
多くは食べた直後から1時間以内に発症することが多いとされ、症状が強く現れると蕁麻疹や息苦しさを感じる場合もあります。
かなり重症になると血圧や意識の低下などのアナフィラキシーが起こることもあるので、なすを食べてこれらの症状が出た場合はすぐに医療機関で診てもらいましょう。※31
※参照31/草ヶ谷医院|口腔アレルギー症候群って,ご存知ですか?
ナスニンが含まれるなすは抗酸化作用を持ち、シミやしわを防ぐ効果があるとされています。
しかし一方で、なすには、仮性アレルゲンを引き起こすヒスタミンが含まれているため、触ったり、口の周りについたりすると皮膚がただれ、肌が荒れることがあります。
仮性アレルゲンとは、なすに含まれるヒスタミンが身体の組織に直接作用して、アレルギー症状が起こったかのような症状を引き起こすもののことをいいます。
アクの強い野菜やイモ類には仮性アレルゲンが含まれていることが多いため、体調の悪い時は大量に食べるのは避け、適量を守りバランスの良い食事を心がけましょう。※32
食材が古くなると仮性アレルギーの原因となる物質が増えやすくなるため、対策として、
・新鮮なうちに使用する
・加熱して使用する
これらの方法により、症状が強く出るのを抑えることができるといわれています。※33
※参照32/つつみこどもクリニック|仮性アレルゲン
※参照33/すぎもとキッズクリニック|仮性アレルゲン
栄養豊富ななすですが、前述の通り、食べすぎると口腔アレルギー症候群を引き起こす可能性があるため、多くても1日1~2本程度に留めましょう。
また、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざがありますが、これにはいくつかの解釈があるものの、秋茄子は美味しいが体を冷やす野菜であり、体を冷やしてしまう恐れがあるので、妊娠や出産を控えたお嫁さんには食べさせたくないという気遣いから生まれたという説が有力です。
なすにはそれくらい体を冷やす効果があるので、食べすぎには注意が必要です。
なすは低温に弱いという特徴があります。
冷気にあたると水分が抜けてしぼんだり、種が変色したりするので、紙袋に入れて風通しの良い日の当たらない場所で保存しましょう。
夏場は2~3日程度であればこの方法で問題ありませんが、すぐに食べられない時は袋に入れて新聞紙などで包んで野菜室で保存します。
なすを美味しく食べるレシピをご紹介します。
是非活用してみてくださいね。
なすは豊富な栄養素を含み、抗酸化作用やむくみ改善、ダイエットにも役立つなど健康効果の高い食材です。
調理法や保存方法を工夫することで栄養を最大限に引き出し、美味しく健康的に楽しむことができます。
毎日の食卓に栄養豊富ななすを是非取り入れてみてくださいね。