「にんじんって健康に良さそうだけど、どんな栄養が含まれているんだろう?」
にんじんは、カレーライスやきんぴらごぼうなど様々な料理に使い勝手の良い食材ですが、具体的な栄養素や効果についてご存じない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、にんじんに含まれる主な栄養素とその働きについて詳しく解説します。
また、普段の調理で捨ててしまいがちな葉や皮に含まれる栄養素や、生と加熱での栄養価の違い、栄養を逃さない調理法など、知っておくと役立つ情報も併せてご紹介します。
記事の最後には、にんじんを使った簡単で栄養満点なレシピも公開しているので、是非最後までお楽しみください。
本記事では、食品の栄養価を文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より引用しています。
目次
1. にんじんに含まれる栄養素
2. 健康維持に取り入れたい!にんじんの栄養素とその働き5選
① β-カロテン
② 食物繊維
③ カリウム
④ ビタミンC
⑤ カルシウム
3. 生vs加熱!どちらがより栄養を逃さない食べ方?
4. にんじんの葉と皮は栄養豊富!捨てずに賢く使おう
6. 知っておくと役に立つ!にんじんの長持ち保存方法
7. 栄養満点レシピ!皮つきにんじんの簡単レシピ
8. おわりに
にんじんには、私たちの体に必要な栄養素が沢山含まれています。この項では、にんじんに含まれる主な栄養成分についてご紹介します。
にんじん(皮なし)100gに含まれる主な栄養素一覧
栄養素 | 量 |
---|---|
ビタミンA(β-カロテン) | 6300μg |
食物繊維 | 2800mg |
カリウム | 300mg |
ビタミンC | 4mg |
カルシウム | 24mg |
炭水化物 | 8.8g |
タンパク質 | 0.7g |
脂質 | 0.2g |
糖質 | 6g |
ビタミンB1 | 0.04mg |
ビタミンB2 | 0.03mg |
ビタミンB6 | 0.09mg |
ビタミンE(α−トコフェロール) | 0.5mg |
ビタミンK | 4μg |
マグネシウム | 9mg |
鉄 | 0.2mg |
ナイアシン | 0.7mg |
葉酸 | 23μg |
ここからは、にんじんに含まれる栄養素の中でも、健康維持におすすめしたい栄養素を5つピックアップしてご紹介します。
β-カロテンは、夜間視力の維持や、皮膚の健康維持に役立つだけでなく、がんや老化を引き起こす活性酸素の発生を抑え、除去する働きがあります。人間の体は本来、酵素によって活性酸素を抑える機能を備えていますが、年齢と共に体内で作られる酵素の量が減少する為、にんじんなどの食材から栄養を補うことが大切と言えます。(※1)
β-カロテンは、体内のビタミンAが不足している時にだけビタミンAに変換され、過剰な場合は変換されずに排出されます。
ビタミンAは動物性食品にも多く含まれ、過剰摂取すると健康に悪影響を及ぼすことがありますが、β-カロテンは必要な分だけビタミンAに変わる為、摂りすぎる心配がありません。(※2)
※参照1/ 厚生労働省|e-ヘルスネット 抗酸化ビタミン
※参照2/ 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版) ビタミンA p.171-177
食物繊維には、脂質・糖・塩分を吸着して体の外に排出する働きがあります。(※3)
脂質や糖質は私たちの活動に必要なエネルギー源ですが、過剰に摂取すると肥満の原因になるのです。
ダイエットや生活習慣病の予防改善には、普段からにんじんのような食物繊維を含む食材を取り入れつつ、脂質や糖質に偏らない食事を心掛けることが大切と言えます。
食物繊維は、水に溶けない「不溶性食物繊維」と 水に溶ける「水溶性食物繊維」の2種類があり、にんじんには不溶性食物繊維が豊富に含まれています。
不溶性食物繊維は、胃や腸で水分を吸収して膨らみ、便の量を増やし腸を刺激することで、便秘解消の頼もしい味方となってくれるでしょう。 (※4)
※参照3 / 厚生労働省|e-ヘルスネット 食物繊維
※参照4 / 大正製薬株式会社 |大正健康ナビ 便秘に効く“腸習慣”ですっきり体質になる!
カリウムは、人体に必要なミネラルの一種で、細胞内の液体のバランスを一定に保ち、体内の酸性とアルカリ性のバランスを整えます。また、ナトリウムを体の外に出しやすくする作用もある為、塩分を摂り過ぎた時に役立つでしょう。(※5)
むくみを引き起こす要因の一つに塩分の摂りすぎがあります。塩分を摂りすぎると血液中の塩分濃度が上がり、体は水分を増やして塩分を調整しようとします。この余計な水分が血管から漏れ出し、むくみを引き起こすのです。
にんじんはカリウムが豊富に含まれており、不要な塩分を尿中に排出するのに役立ちます。普段の食事へにんじんを取り入れることで、効率良くむくみ対策ができるでしょう。 (※5)
※参照5 / 厚生労働省|e-ヘルスネット カリウム
ビタミンCは、皮膚・血管・骨などのコラーゲンの生成に欠かせない栄養素です。(※6)
これにより傷の治癒を促進し、肌や髪を健康に保つ効果が期待できます。
しかし、ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱い特性がある為、調理によって減少することがあるのです。
その為、ビタミンCの損失を減らすには サラダのように生で食べるか、蒸し調理や電子レンジ調理がおすすめ。
ビタミンCは、「フリーラジカル」と呼ばれる有害物質から細胞を保護する働きがあります。(※6)
フリーラジカルとは、食べ物を体内でエネルギーに変える際や、たばこの煙、大気汚染、紫外線などから体内に取り込まれる有害な化合物です。
にんじんに含まれるビタミンCは、癌や動脈硬化などに繋がる恐れのあるフリーラジカルを取り除く働きがあります。(※7)
※参照6 / 厚生労働省|「統合医療」に係る 情報発信等推進事業 ビタミンC
※参照7 / 独立行政法人国立健康・栄養研究所|研究紹介:糖尿病でビタミンCがなぜ足らなくなる?
カルシウムは、私たちの体に最も多く含まれるミネラルで、主に骨や歯を形成する役割を持ちます。
成人の体内には約1kgのカルシウムが含まれており、各種ミネラルの中で最も多く存在します。そのほとんどがリン酸カルシウムとして、骨や歯のエナメル質に含まれているのです。 (※8)
また、カルシウムは唾液の中にも含まれており、溶けかけた歯を修復する働きがあります。(※9)
カルシウムには脳神経の興奮を抑える役割があります。その為、カルシウムが不足すると脳神経が興奮しやすくなり、イライラしやすくなると考えられがちです。
しかし、カルシウムは体内で厳密に管理されていて、カルシウムが不足すると骨から血液中に放出され、逆に過剰になると骨に蓄えられたり、尿として排出されたりします。
つまり、カルシウムを含む食べ物を摂らないからといって、すぐにイライラにつながるというわけではないのです。(※10)
参照8 /厚生労働省|e-ヘルスネット カルシウム
参照9 /厚生労働省|e-ヘルスネット むし歯の特徴・原因・進行
参照10 /厚生労働省|e-ヘルスネット ストレスと食生活
結論からお伝えすると、にんじんは生のまま食べるのが最も栄養成分を逃さずに摂取できる方法と言えます。
にんじんに含まれる栄養素は、水に溶けやすい性質のものや、熱に弱い性質のものがあり、茹でたり・火を通すことによって流出してしまうことがあるからです。(※7)(※8)
例えば、カリウム・ビタミンC・ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)などがそれにあたります。
その為、にんじんの栄養をより効率良く摂取したい方は、生で食べることをおすすめします。
※参照7 / 独立行政法人国立健康・栄養研究所|ビタミンについて
※参照8 /東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター|慢性腎臓病の食事療法
普段の調理で捨ててしまいがちな葉や皮ですが、どんな栄養が含まれているのでしょうか?
この項では、にんじんの葉と根(可食部)の栄養を比較してご紹介します。
上のグラフをご覧いただくと、葉の部分にはビタミンC・カリウム・カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれていることがお分かりいただけるでしょう。
特に美容に効果的なビタミンCは約5倍、歯や骨を強く保つカルシウムは約4倍、むくみ予防に役立つカリウムは約1.7倍多く含まれています。
また、葉にもβ-カロテンが含まれていますが、根の部分に比べると約5倍少ないことがわかりますね。
にんじんの葉を美味しくいただくには、かき揚げやおひたしなどの料理にするのがおすすめです。
この項では、にんじんの根の部分を「皮つき」と「皮なし」で比較してご紹介します。上のグラフをご覧いただくと、皮つきのにんじんには、ビタミンC・β-カロテン・カルシウムが多く含まれていることがわかりますね。
栄養を効率的に摂取する為には、皮つきで調理すると良いでしょう。
皮つきのにんじんを美味しくいただくには、薄くスライスしてきんぴらにしたり、細切りにしてピクルスにするのがおすすめです。
にんじんには体に嬉しい栄養がたっぷり含まれていますが、調理法によってはその栄養が失われてしまうこともあるのです。
そこで、ここからはにんじんの栄養を効率良く摂取できるおすすめの調理法を3つご紹介したいと思います。
にんじんには、ビタミンC・ビタミンB群・カリウムなどの水に溶けやすい栄養素が豊富に含まれています。 (※9)(※10)
これらの栄養を損なわずに摂取するには、生のままサラダで食べるのが理想的です。
ただし、食べる前に水にさらし過ぎないように気を付けましょう。
また、生のにんじんが苦手な方や、食べ方にバリエーションを加えたい方には、酢漬けをおすすめします。
酢漬けは加熱をしない為、にんじんの栄養素を保持しつつ、酢に溶け出した栄養分も一緒に摂取することができるのです。
※参照9 / 独立行政法人国立健康・栄養研究所|ビタミンについて
※参照10 /東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター|慢性腎臓病の食事療法
にんじんに含まれるβ-カロテンは脂溶性ビタミンです。(※11)脂溶性ビタミンは、油脂に溶ける性質がある為、油と一緒に摂ることでβ-カロテンの吸収が向上します。
例えば、天ぷらや野菜炒めのように油で調理したり、サラダにドレッシングをかけたり、脂質を含む食材と一緒に食べることが効果的。
ただし、油はカロリーが高い為、使用量には注意が必要です。例えば、オリーブオイル大さじ1杯(134kcal )は、ご飯小盛り1杯(156kcal )とほぼ同じカロリーがあります。油を使う際は、適量を心掛けることが大事ですね。
※参照11 / 厚生労働省|e-ヘルスネット 緑黄色野菜
ビタミンCやビタミンB群のような熱に弱い栄養素は、高温での調理時間が短い程、食材内に多く留まります。したがって、にんじんを加熱する際には、茹でるよりも電子レンジで調理するのが良いでしょう。
電子レンジ調理は通常、加熱時間が短く済む為、熱に弱い栄養素の損失を最小限に抑えることができます。さらに、にんじんには水に溶けやすい栄養素も豊富に含まれており、茹でるとそれらが水に溶け出してしまいます。
しかし、水を使わない電子レンジ調理では栄養素の流出量も少ない為、栄養素を逃さず摂るのにおすすめの調理法と言えるでしょう。(※12)
※参照12 /東京都保健医療局|東京都食品安全FAQ
野菜は収穫された状態で保存すると長持ちする場合が多く、にんじんも例外ではありません。
にんじんを保存する際には、まず新聞紙やキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保存しましょう。
この時、にんじんが濡れていると傷みやすくなる為、しっかりと水分を拭き取ることが大事です。
また、冷凍保存もおすすめの方法です。
にんじんの代表的な栄養成分であるβ-カロテンの含有量は、生の状態で100g当たり6900μgですが、冷凍すると9100μgに増えます。冷凍する場合、にんじんを薄くイチョウ切りや千切りにし、そのままチャック付きの保存袋に入れて冷凍すると使い勝手が良く便利です。
ここからは、皮つきにんじんを使った簡単で栄養満点なレシピを4つご紹介します。
カロリー
129 kcal(1人あたり)
・にんじん(皮つき) 1/2本(80g)
・大根(皮つき) 15cm(300g)
☆麺つゆ(3倍濃縮) 大さじ2
☆砂糖 小さじ1
・オリーブオイル 大さじ1
・いりごま 適量
①皮がついたにんじんと大根を丁寧に洗い、細切りにする。
②フライパンにサラダ油を熱し、①を入れてしんなりするまで炒める。
③②に☆を加えて、水分がなくなるまで炒め合わせる。
④器に盛り、ごまを振ったら完成。
カロリー
139 kcal(1人あたり)
※漬け込み液を40%摂取するとして計算
・にんじん(皮つき) 1/2本(80g)
・大根(皮つき) 15cm(300g)
・黄色パプリカ 1/2本(75g)
・赤パプリカ 1/2本(75g)
・きゅうり 1本(100g)
☆酢 大さじ6
☆砂糖 大さじ6
☆塩 大さじ1/2
①野菜を丁寧に洗い、全ての野菜を食べやすい大きさに切る。
②容器に☆を入れ、混ぜ合わせる。
③調味液の入った②の容器に、切った野菜を全て入れ、冷蔵庫で1日漬け込んだら完成。
お好みで黒こしょうを振っても美味しくいただけます。
カロリー
226 kcal(1人あたり)
※衣の吸油率を18%として計算
・にんじん(皮つき) 1/2本(80g)
・玉ねぎ 1/4個(50g)
☆薄力粉 大さじ5
☆冷水 大さじ4
・オリーブオイル 大さじ6
①にんじんと玉ねぎを細切りにする。
②☆をボウルに入れ、5回程ざっくりかき混ぜる。
③②のボウルに、①を全て入れ全体に衣汁が絡むように混ぜる。
④フライパンにオリーブオイルを流し込み、手をかざして熱を感じる位にまで熱する。
⑤具材をスプーンで一口大にすくって、なるべく薄くフライパンに並べる。
⑥菜箸で触ってみて、カリッとした硬さが出てきたタイミングでひっくり返す。
⑦全体に色が付き、気泡が細かくなってきたら完成。
塩、わさび醤油、にんにく醤油、麺つゆなど、お好みの調味料でどうぞ。
カロリー
55 kcal(1人あたり)
・にんじん(皮つき) 1/2本(80g)
・大根(皮つき) 5cm(100g)
・味噌 大さじ2
☆水 400cc
☆顆粒だし 小さじ1
①大根とにんじんは細切りにする。
②鍋に☆と、①を入れて火にかける。
③野菜に火が通ったら、味噌を溶いて完成。
この記事では、にんじんに含まれる主な栄養素とその働き、そして栄養を逃さずに取り入れる方法をご紹介しました。
にんじんは栄養価が高い野菜で、特にβ-カロテンや食物繊維が豊富です。これらは、免疫力の向上や視覚機能の維持、便通の改善などに役立ちます。
しかし、にんじんには水に溶けやすい栄養素や、熱に弱い栄養素が多く含まれている為、これらを効果的に摂取するにはちょっとした工夫が必要です。
例えば、調理方法を「茹でる」から「電子レンジ調理」に変えることにより、栄養素の流出を最小限に留めることができます。また、にんじんと油を一緒に摂ることでβ-カロテンの吸収率をより高めることもできるのです。
食材に含まれる栄養を知ることは健康管理をする上で役立ちますが、併せて効果的な取り入れ方を知ることで、食材の価値をより引き出すことができます。
今回ご紹介したにんじんの栄養と摂取方法を日々の食生活に活用し、これからの健康維持に役立ててくださいね。