大根は、根だけでなく葉や皮にも豊富な栄養が含まれており、どの部位も健康に役立つ魅力的な食材です。
普段は捨ててしまいがちな葉や皮も、ひと工夫で栄養を無駄なく活用できます。
この記事では、そんな大根の栄養について、以下のような内容を詳しくご紹介していきます。
・大根に含まれる栄養成分の特徴
・栄養を逃さない食べ方のコツ
・栄養を無駄なく活用できるレシピ
1. 大根の栄養を徹底解説!葉と根で異なる成分とその効果とは?
2. 大根は栄養満点!大根に含まれる9つの成分を部位別に解説
3. 大根の根に含まれる主な成分(酵素・辛み成分)
①アミラーゼ(酵素)
②オキシダーゼ(酵素)
③イソチオシアネート(辛み成分)
4. 大根の葉に含まれる栄養素
①β-カロテン
②カルシウム
5. 大根の根と葉に共通して含まれる栄養素
①葉酸
②ビタミンC
③カリウム
④食物繊維
6. 大根の栄養を逃さず美味しく食べる4つの方法
①大根の根は生で食べる
②大根の根は皮ごと食べる
③大根の根は干して栄養を凝縮させる
④大根の葉は油と一緒に摂る
7. 大根を長く美味しく楽しむ!栄養を守る正しい保存方法
8. 大根の栄養をしっかり摂れる簡単レシピ3選
①皮付き大根のツナマヨサラダ
②水戻し不要!切干大根の煮物
③大根の葉のふりかけ
9. まとめ
大根は、根と葉で含まれる栄養成分が異なり、それぞれに特有の健康効果があります。
根の部分には、胃腸の働きを助けるアミラーゼや発がん物質を分解するオキシダーゼなどの酵素が豊富に含まれています。
一方、葉の部分には、粘膜を正常に保ち感染症予防に役立つカロテンや、骨の健康を支えるカルシウムなどのビタミンやミネラルが多く含まれています。
さらに、大根全体に共通する栄養成分として、以下のものが挙げられます。
葉酸:細胞の新生や赤血球の生成に必要不可欠。
ビタミンC:強力な抗酸化作用で細胞を有害な活性酸素から守る。
カリウム:ナトリウムの排出を促し、高血圧予防に効果的。
食物繊維:腸内環境を整え、便通を改善する。
このように、大根は葉と根を合わせて食べることで、さまざまな栄養を効率よく摂取できる優れた食材なのです。 ※1
※参照1/独立行政法人農畜産業振興機構|今月の野菜 大根 2013年1月
前述した通り、大根には根と葉で異なる栄養成分を含んでおり、それぞれに健康効果があります。
ここからは、大根に含まれる主要な成分を9つピックアップし、部位ごとにわかりやすく解説します。
大根の根には、体に役立つさまざまな成分が含まれています。
特に注目したいのは、消化を助ける酵素や独特の辛みを生み出す成分です。
ここからは、大根の根に含まれる代表的な成分とその働きについて詳しく解説します。
大根(生)には、消化を助ける酵素であるアミラーゼが含まれています。
アミラーゼは、主にデンプンを分解する働きがあり、ご飯や麺類、餅などと組み合わせると効果的で、これらの食品と一緒に食べることで胃もたれや胸やけの予防に役立つでしょう。
ただし、アミラーゼは熱に弱いため、加熱調理するとその効果は失われてしまいます。
効果を最大限に得るためには、サラダや大根おろしなど、生で食べることをおすすめします。※2 ※3
※参照2/独立行政法人農畜産業振興機構|だいこん 大根 産地 野菜 栄養 機能性 調理
※参照3/財団法人 環境科学技術研究所|野菜にはこんな働きがある
オキシターゼは、大根の根に含まれる解毒作用のある酵素で、発がん性物質の分解を助け、がん予防への効果が期待されています。
肉や魚が焦げた部分には、発がん物質を含む化学物質が微量に含まれているため、焼き魚に大根おろしを添える食べ方は理にかなった健康的な習慣といえるでしょう。 ※4 ※5
※参照4/独立行政法人農畜産業振興機構|四季の野菜の健康と栄養 ~胸やけや胃もたれを予防するだいこんと 疲労回復効果が期待できるれんこん~
※参照5/農林水産省|食品中のアクリルアミドに関する情報
イソチオシアネートは、大根の根を切ったりすりおろしたりする際に細胞が壊れることで生成される成分で、大根特有の辛みのもとです。
この成分には、肝臓の解毒作用を活性化し、発がん性物質の毒性を抑える働きがあるため 、がん予防への効果が期待されています。
さらに、血栓の予防や消化促進、殺菌作用といった健康効果も知られています。
イソチオシアネートの含有量は大根の部位によって異なり、先端部分に最も多く含まれます。
この成分を効率よく摂取するには、大根の先端部分をすりおろして大根おろしとして食べるのがおすすめです。※6 ※7
※参照6/独立行政法人農畜産業振興機構 今月の野菜 大根 2013年1月
※参照7/農林水産省|消費者の部屋 野菜・果物
大根の葉には、根にはほとんど含まれないβ-カロテンやカルシウムが豊富です。
以下の表で、大根の葉と根に含まれる栄養素の違いを確認しながら、それぞれの働きを詳しく見ていきましょう。
栄養素 | 大根の葉(生) | 大根の根(皮付き・生) |
---|---|---|
β-カロテン | 3900mg | 0mg |
カルシウム | 260mg | 24mg |
β-カロテンは、大根の根には含まれない貴重な栄養素です。※8
夜間視力の維持や、皮膚の健康維持に役立つだけでなく、がんや老化を引き起こす活性酸素の発生を抑え、除去する働きがあります。
人間の体は本来、酵素によって活性酸素を抑える機能を備えていますが、年齢と共に体内で作られる酵素の量が減少するため、大根などの食材からβ-カロテンを補うことが大切と言えます。 ※9
※参照8/文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 大根(根・皮付き・生) 大根(葉・生)より
※参照9/厚生労働省|e-ヘルスネット 抗酸化ビタミン
大根の葉には、根の約10倍ものカルシウムが含まれています。※10
カルシウムは、私たちの体に最も多く含まれるミネラルで、主に骨や歯を形成する役割を持ちます。
成人の体内には約1kgのカルシウムが含まれており、各種ミネラルの中で最も多く存在します。
そのほとんどがリン酸カルシウムとして、骨や歯のエナメル質に含まれているのです。
また、カルシウムは唾液の中にも含まれており、溶けかけた歯を修復する働きがあります。※11 ※12
※参照10/文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 大根(根・皮付き・生) 大根(葉・生)より
※参照11/厚生労働省|e-ヘルスネット カルシウム
※参照12/厚生労働省|e-ヘルスネット むし歯の特徴・原因・進行
大根の根と葉には、それぞれ異なる特徴的な栄養素が含まれていますが、どちらにも共通して含まれる栄養素もあります。
ここでは、葉と根のどちらからも摂取できる栄養素とその効果について詳しく解説します。
栄養素 | 大根の葉(生) | 大根の根(皮付き・生) |
---|---|---|
葉酸 | 140μg | 34μg |
ビタミンC | 53mg | 12mg |
カリウム | 400mg | 230mg |
食物繊維 | 4g | 1.4g |
葉酸は、ビタミンB群の水溶性ビタミンです。
多くの研究により、葉酸が胎児における神経管閉鎖障害リスクを低減※13させることや、動脈硬化の発症予防に関与※14していることがわかっています。
妊婦さんはもちろん、これから妊娠を考えている方、またミドル・シニア世代にもおすすめしたい栄養素です。
※参照13/厚生労働省|葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果
※参照14/厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版) p.232-237
ビタミンCは、コラーゲンの生成を助けることで、肌や髪の健康維持に貢献し、傷の治癒を促進します。
強力な抗酸化作用を持ち、体内に侵入した有害な活性酸素から細胞を保護することで、老化や生活習慣病の原因となる酸化ストレスから体を守ってくれるのです。※15
※参照15/厚生労働省|「統合医療」に係る 情報発信等推進事業 ビタミンC
カリウムは、体内の塩分バランスを整え、余分なナトリウムを排出する働きがあるため、塩分過多によるむくみを予防する効果が期待できます。
ナトリウムが体内に過剰に蓄積されると、血管内の水分量が増え、血圧が上昇する原因となりますが、カリウムを摂取することでナトリウムの排出が促進されるため 、血圧の上昇を抑えることができます。
大根に豊富に含まれるカリウムを摂取することで、高血圧予防につながり、健康的な体づくりを実現しやすくなるでしょう。 ※16 ※17
※参照16/厚生労働省|e-ヘルスネット カリウム
※参照17/厚生労働省|e-ヘルスネット 栄養・食生活と高血圧
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。
以下の表からもわかるとおり、大根は根・葉ともに不溶性食物繊維を多く含んでいます。※18
不溶性食物繊維は、腸を適度に刺激し、便通を促すことで便秘の改善に効果的です。
また、食物繊維には脂質や糖質を吸着して体外に排出する働きがあり、これにより肥満や糖尿病などの生活習慣病予防にも役立ちます。※19 ※20
食物繊維内訳 | 大根の葉(生) | 大根の根(皮付き・生) |
---|---|---|
不溶性食物繊維 | 3.2g | 0.9g |
水溶性食物繊維 | 0.8g | 0.5g |
※参照18/文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 大根(根・皮付き・生) 大根(葉・生)より
※参照19/厚生労働省|e-ヘルスネット 便秘と食習慣
※参照20/厚生労働省|e-ヘルスネット 食物繊維
大根は、栄養価が高く、食べ方次第でその栄養をさらに引き出せる野菜です。
この章では、大根の栄養を逃さず手軽に美味しく食べるための4つの工夫をご紹介します。
大根の根は、生のまま食べるのが最も栄養成分を逃さずに摂取できる方法と言えます。
大根に含まれる栄養素は、水に溶けやすい性質のものや熱に弱い性質のものがあり、茹でたり・火を通すことによって流出してしまうことがあるからです。
例えば、ビタミンCやカリウムがこれにあたります。※21 ※22
そのため、これらの栄養を損なわずに摂取するには、生のままサラダや大根おろしで食べるのが理想的です。
生の大根が苦手な方や、食べ方にバリエーションを加えたい方には、甘酢漬けをおすすめします。
甘酢漬けは加熱をしないため、大根の栄養素を保持しつつ、酢に溶け出した栄養分も一緒に摂取することができるのです。
※参照21/独立行政法人国立健康・栄養研究所|ビタミンについて
※参照22/東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター|慢性腎臓病の食事療法
大根の皮には、カルシウムや食物繊維が多く含まれており、皮をむいてしまうとこれらの栄養素を捨ててしまうことになります。※23
栄養を効率よく摂取するためには、皮ごと食べるのがおすすめです。
皮つきの大根をおいしく楽しむには、せん切りにしてサラダに加えたり、軽く塩もみして漬物にすると良いでしょう。
また、煮物や炒め物に使えば、皮の歯ごたえがアクセントになります。
こうした工夫で、手軽に栄養を丸ごと取り入れることができます。
※参照23/文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 大根(根・皮付き・生) 大根(根・皮なし・生)より
大根の根は、干すことで水分が抜け栄養が凝縮されます。
切干大根のような乾燥大根は、特に食物繊維やカリウムなどの含有量が大幅に増加するため、少量でも効率よく栄養を摂取できるでしょう。※24
さらに、干すことで旨味が引き出され、料理に深い味わいを加えることができるのも特徴です。
干す工程は簡単で保存性も高まるため、常備菜としても活用しやすいでしょう。
以下は、切干大根と生の大根に含まれる主な栄養素を比較したものです。
栄養素 | 切干大根(乾) | 大根の根(皮付き・生) |
---|---|---|
食物繊維 | 21.3g | 1.4g |
カルシウム | 500mg | 24mg |
カリウム | 3500mg | 230mg |
※参照24/文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 切干大根(乾) 大根(根・皮付き・生)より
前述した通り、大根の葉には根には含まれない栄養素であるβ-カロテンが豊富に含まれています。
β-カロテンは、脂溶性ビタミンの一種で、油と一緒に摂ることで体内への吸収率が高まるのが特徴です。※25
そのため、効果的に摂取するためには、油を使った調理がおすすめです。
例えば、大根の葉を使った野菜炒めや、油揚げと一緒に煮物にする方法があります。
※参照25/厚生労働省|e-ヘルスネット 緑黄色野菜
大根は、保存方法を工夫することで鮮度を保ち、栄養を損なわずに楽しむことができるでしょう。
ここからは、大根をより美味しく長く楽しむための適切な保存方法をご紹介します。
保存手順とコツ
①葉と根を切り離す
包丁で茎の部分を切り落とし、葉と根を分けます。
これは、葉が根の養分や水分を吸い上げるのを防ぐためです。
切り落とした葉は、刻んで炒め物やスープ、ふりかけなどに使うのもおすすめです。
記事の最後には、大根の葉を使った栄養たっぷりのふりかけレシピもご紹介しているので、是非参考にしてみてください。
②根を新聞紙で包み冷蔵庫に立てて保存
大根は、乾燥を防ぐために、根の部分を新聞紙で包み、冷蔵庫の野菜室に立てて保存しましょう。
大根のような縦に成長する野菜は、土の中と同じように根を下に向けた状態で立てて保存することで、鮮度が保ちやすくなるのです。
冷蔵庫に一本丸ごと入りきらない場合は、適当な大きさに切り分け、切り口だけでなく全体をラップでしっかり包んだうえで、フリーザーバックに入れて保存するのがおすすめです。
③最適な保存温度と保存期間
なお、保存温度についてですが、大根の適切な保存温度は0〜1℃とされています。※26
常温で保存されている方もいるかもしれませんが、鮮度を保つためには冷蔵庫での保存が最適です。
保存期間の目安
・一本丸ごとの場合・・・1ヶ月程度
・切り分けた場合・・・3~4日程度
※参照26/農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)|冷蔵での野菜の最適貯蔵条件
大根を使った料理は、調理法によって栄養を無駄なく摂取できるのが魅力です。
ここでは、手軽に作れて栄養満点な大根の簡単レシピを3つご紹介します。
忙しい日でも、ひと工夫で大根の魅力を最大限に引き出すことができますよ。
食品の栄養価は、「文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より引用しています。
カロリー 241kcal(1人あたり)
大根(皮付き) 150g
ツナ缶(油漬) 1缶(70g)
☆マヨネーズ 大さじ2
☆醤油 小さじ1/2
☆すりごま 大さじ1
塩(大根の水切り用) ひとつまみ
カイワレ大根 お好みで(辛みがあるため)
1. 大根は皮付きのまま細切りにし、ひとつまみの塩を振り、混ぜ合わせた状態で5分ほど置く。
2. 水気をしっかり絞った大根をボウルに入れ、水切りしたツナ缶を加える。
(カイワレ大根を入れる場合は、このタイミングで加えます。)
3. ☆を加えて全体をよく混ぜる。
4. 器に盛り付けて完成。
カロリー 132kcal(1人あたり)
切干大根 20g
にんじん 1/3本
油揚げ 1枚
☆麺つゆ(3倍濃縮)大さじ1
☆水 200㏄
ごま油 小さじ1
1. にんじんと油揚げを細切りにする。
2. フライパンにごま油を熱し、にんじんと油揚げを炒める。
3. 2のフライパンに、☆と切干大根を加え、汁気がなくなるまで中火で煮詰める。
4. 器に盛り付けて完成。
カロリー 135kcal(1人あたり)
大根の葉 100g
ごま油 小さじ2
☆麺つゆ(3倍濃縮) 大さじ1
☆酒 大さじ1
☆みりん 大さじ1
かつお節 1パック
白ごま 大さじ1
1. 大根の葉を細かく刻み、フライパンでごま油を熱し、葉を入れて炒める。
2. 葉がしんなりしてきたら☆を加え、さらに炒める。
3. 火を止め、かつお節と白ごまを加え混ぜれば完成。
大根は根や葉、そして皮にまで体に嬉しい栄養素がたっぷり詰まった食材です。
調理の工夫次第で、栄養をしっかり摂りながら、その美味しさを楽しむことができます。
ぜひ、この記事のアイデアを参考に、大根の栄養を無駄なく、美味しく、健康的に活用してみてください。