ほうれん草は栄養価が高く、多くの健康効果があります。
本記事では、ほうれん草に関する栄養素や効率的な摂取方法、注意したい点まで幅広くご紹介します。
ほうれん草100g(1/2束)あたり※1 | |
---|---|
エネルギー | 18kcal |
塩分 | 0g |
タンパク質 | 2.2g |
脂質 | 0.4g |
炭水化物 | 3.1g |
カリウム | 690mg |
カルシウム | 49mg |
マグネシウム | 69mg |
鉄 | 2.0mg |
βカロテン | 4200μg |
ビタミンK | 270μg |
ビタミンB1 | 0.11mg |
ビタミンB2 | 0.20mg |
葉酸 | 210μg |
ビタミンC | 35g |
食物繊維 | 2.8g |
※参照1/食品データベース
ほうれん草は、多くのビタミンやミネラルを含む、栄養豊富な野菜です。
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンK、葉酸、鉄、カリウム、マグネシウムなどが含まれています。
これらの栄養素は、健康維持や病気予防に役立ちます。
以下からは、ほうれん草に含まれる代表的な栄養素7つをご紹介します。
ほうれん草100g(約1/2束)あたりの食物繊維含有率:2.8g※1
ほうれん草には豊富な食物繊維が含まれており、腸内環境を整え、便秘を予防する効果があります。
また、食物繊維には、食後の血糖値の急上昇を抑える効果やコレステロールの吸収抑制、過食による肥満を防止する効果も。※2
食物繊維は不足しがちな栄養素なので、積極的な摂取を心がけましょう。
※参照1/食品データベース
※参照2/改訂新版栄養の教科書|新星出版社|2016年4月15日|監修:中嶋洋子|P130~133、P116~117、P86、P92~93、P98、P102
ほうれん草100g(約1/2束)あたりのマグネシウム含有率:69mg※1
ほうれん草に含まれるマグネシウムは、疲労回復や筋肉のけいれん防止に役立つだけでなく、神経の伝達を調整し、気分を安定させる効果も期待できます。※3
ストレス時にはマグネシウムの必要量が高まり、欠乏すると、イライラや神経過敏になることも。
それ以外にも、マグネシウムが不足すると、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると動脈硬化のリスクが高くなります。
そのため、ほうれん草をはじめとする野菜類、穀類、豆類などマグネシウムを含む食品をバランスよく摂取しましょう。
※参照3/e-ヘルスネット|マグネシウム
ほうれん草100g(約1/2束)あたりの鉄含有率:2.0mg※1
鉄は、赤血球を作る働きや、酸素を運ぶ役割を果たす重要なミネラルです。
また、鉄は大きく以下の2種類に分けられます。
・ヘム鉄
・非ヘム鉄
ほうれん草には非ヘム鉄が豊富に含まれており、貧血予防に効果的です。
非ヘム鉄はビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取すると鉄の吸収率が高まります。
鉄が欠乏すると鉄欠乏性貧血や免疫力低下を引き起こすこともあるので、積極的に摂取しましょう。※2
特に、女性の場合は月経によって毎月鉄が失われ、貧血になりやすいので意識的に摂ってくださいね。
ほうれん草100g(約1/2束)あたりのβカロテン含有率:4200μg※1
ほうれん草にはβカロテンが多く含まれています。
βカロテンは抗酸化作用があり、心筋梗塞や脳血管疾患などの生活習慣病の予防などの健康効果が期待できます。
また、βカロテンは、体内でビタミンAに変換もされ、視力の維持や免疫機能の強化に役立ちます。※2
ほうれん草100g(約1/2束)あたりのビタミンB1含有率:0.11mg※1
ビタミンB1は、糖質の代謝を助ける働きや、神経組織を正常にするのに役立つ栄養素です。※2
ビタミンB1が不足すると、炭水化物により摂取した糖質をエネルギーに変えることができず疲労物質が溜まりやすくなります。※4
ビタミンB1は、食事からの摂取不足や甘いもの・炭水化物の摂りすぎ、お酒の飲みすぎによってどんどん失われてしまい、不足しやすくなります。※5
ビタミンB1は体内に貯蔵されにくい栄養素なので、過剰摂取の心配はほとんどありません。
そのため、日ごろから積極的に摂取することをおすすめします。
※参照4/平成21年4月10日 発行所:主婦の友社 発行者:神田高志 監修:聖徳大学教授・医学博士 中嶋洋子/医学博士・健康科学大学教授・DHC研究顧問 蒲原聖可/相模女子大学教授 阿部芳子
※参照5/国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所|「健康食品」の安全性・有効性|ビタミンB1
ほうれん草100g(約1/2束)あたりの葉酸含有率:210μg※1
葉酸は、赤血球の生成やDNA合成に必要な栄養素です。※2
ほうれん草に野菜の中でも葉酸の含有率が高く、ほうれん草100g(約1/2束)あたり、葉酸が210μg含まれています。※1
これは、葉酸を1日に摂取する推奨量240g※6の約88%を補うことができる量です。
しかし、妊娠中の女性は通常よりも多くの葉酸が必要です。
葉酸には胎児の健全な発育をサポートする働きがあり、不足すると心疾患のリスクが高まり、新生児の神経管閉鎖障害の原因になることも。
そのため、普段の食事に加えて葉酸の多い食品を摂取するように心がけましょう。
※参照6/日本人の食事摂取基準(2020 年版)|P233
ほうれん草100g(約1/2束)あたりのビタミンC含有率:35mg※1
ビタミンCは、免疫力を高めるため、風邪予防に役立ちます。
また、ビタミンCはコラーゲンの合成を助けて、皮膚のしみやシワを防ぐ効果もあります。※2
一つ注意したい点として、ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱い特徴があるので、ほうれん草の茹ですぎには気を付けましょう。
ほうれん草の茹で時間について、下記の記事で詳しくご紹介しています。
よろしければ参考にしてくださいね。
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ほうれん草の茹で時間は何分がベスト?切ってから茹でると栄養が減るって本当?
ほうれん草は年間を通して購入できますが、冬が旬の野菜です。
冬採りのほうれん草は味が濃く、甘みがあって1年間で1番美味しい時期です。
また、夏採りのほうれん草に比べて、ビタミンCの含有量が3倍も高くなります。
その理由は、季節によって生育期間と生育環境が異なるからです。
夏は生育が早いので、栽培期間につくられるビタミンCの量は少ない特徴があります。
また、それだけでなく、夏は太陽光が強くなるので、葉や茎を傷つける活性酵素ができやすく、順調に生育しにくくなります。
活性酵素の害から守るには、ビタミンCをたくさん使用する必要があります。
そのため、夏採りはビタミンCの残存率が減ってしまうのです。
反対に、冬は太陽光が弱く、活性酵素はあまりつくられません。
生育がゆっくりになり栽培期間が長くなるので、その分作られるビタミンCも多くなるというわけです。
ビタミンCは長時間水にさらしたり、加熱したりすると栄養が流出してしまう特徴があります。
そのため、ほうれん草のビタミンCを守るためには、茹ですぎに注意しましょう。
茹で時間を1分程度にすると、ほうれん草の風味や歯ごたえをしっかり感じられ、栄養の流出も極力減らすことができます。
また、下記の表では、ほうれん草に含まれる代表的な栄養素を
・水への溶けやすさ
・耐熱性
の項目でまとめました。
ほうれん草に含まれる栄養素の特徴 | 水への溶けやすさ | 耐熱性 |
---|---|---|
カリウム | × | 高い |
マグネシウム | ○ | 高い |
βカロテン | × | 高い |
ビタミンK | × | 高い |
ビタミンB1 | ○ | 低い |
ビタミンB2 | ○ | 高い |
葉酸 | ○ | やや高い |
ビタミンC | ○ | 低い |
表の見方
○→水に溶けやすい
×→水に溶けにくい
ほうれん草はビタミンB1、B2、C、葉酸などの水に溶けやすいビタミンが多く含まれています。
そのため、下茹でする時は、短時間で一気に加熱することが大切です。
以下ではほうれん草の茹で方についてご紹介します。
よろしければ参考にしてくださいね。
■ほうれん草の茹で方
①鍋に2Lの水を入れ、沸騰したら塩小さじ1を加えます。
②10秒程根元と茎の部分を茹でてから、ゆっくりと葉の部分を鍋に入れていきます。
③30秒程経ち、ほうれん草の色が鮮やかになってきたら、水が入ったボウルに引き上げます。
④引き上げたら、ボウルの水を数回替えて、ほうれん草をよく冷ましましょう。
⑤ほうれん草が冷めたら束をそろえて手でよく絞ったら完成です。
■茹で方のポイント
前述の通り、ほうれん草は茹ですぎると水溶性ビタミンなどの栄養が流出しやすくなるので注意が必要です。
また、それだけでなく、茹ですぎは食感や風味も落ちます。
そのため、ほうれん草を茹でる時は、40秒〜1分程で一気に茹でましょう。
栄養を残しつつ、ある程度アクを取り除くには1分程度の茹で時間がおすすめです。
ほうれん草は、油と一緒に調理することで、ビタミンA、Kをはじめとする脂溶性ビタミンの吸収率が高くなります。
また、油を使って調理する際は、オリーブオイルやごま油などの油を使うと効果的です。
その理由は、通常のサラダ油に比べ、オリーブオイルにはポリフェノール※7、ごま油にはセサミン※8といった抗酸化物質が豊富に含まれているからです。
これらの成分は、脂溶性ビタミンと相乗効果を発揮し、体内での酸化を防ぐため、より良い健康効果を期待できます。
※参照7/日清オイリオ|オリーブオイルの健康性
※参照8/日清オイリオオンラインショップ|ごま油とは?食欲そそる定番オイルの人気の秘密
油で炒めるメリットは他にもあり、ほうれん草に含まれる葉酸は、茹でるよりも炒めた方が減りにくいことが実験で検証されています。
葉酸は水溶性ビタミンであり、茹でると水に溶け出してしまいます。
しかし、葉酸は、水には弱いものの、熱には比較的強い性質があります。
そのため、生の状態から1分30秒炒めても葉酸が98.5%残存する結果となりました。※9
栄養的には生のまま炒めたほうが葉酸の残存率が上がりますが、ほうれん草はアクが強いため実際には茹でた方が美味しく食べることができます。
※参照9/女子栄養大学栄養のなるほど実験室|調理によって栄養はどう変わるか|監修:吉田 企世子|P97
ほうれん草は、常温や冷蔵で保存すると、日ごとに栄養素が失われます。
10度の冷蔵庫で5日間冷蔵保存した場合、ビタミンCの残存率は70%になってしまいます。※10
一方、冷凍ほうれん草は急速冷凍されているため、栄養の損失が最小限に抑えられるというメリットがあります。
-18度以下で冷凍保存しておけば、栄養価を長期間維持できます。
また、それだけでなく、細菌の繁殖を抑え、腐敗を防ぐことで、元の品質を長く保つことも可能です。※11
市販の冷凍ほうれん草の保存期間は、2~3ヵ月程度です。
冷凍ほうれん草を活用すれば、忙しい方でも手軽に栄養を摂取できるため、上手に取り入れましょう。
スムージーやスープには、冷凍のまま加えると便利ですよ。
※参照10/女子栄養大学栄養のなるほど実験室|調理によって栄養はどう変わるか|監修:吉田 企世子|P225
※参照11/農林水産省|おいしさの秘密を知る!冷凍食品豆知識と製造工場レポート
ほうれん草はアクが強いため、摂取する際はいくつかの注意点があります。
以下で詳しく解説します。
ほうれん草にはアクの素となるシュウ酸が含まれています。
シュウ酸は過剰摂取すると、尿路結石になる可能性があるので注意が必要です。
特に、ほうれん草を毎日食べる方は、結石のリスクを減らすためにアク抜きをしましょう。
シュウ酸は水溶性なので、沸騰したお湯で1分間茹でると24%除去、
3分間茹でて1分間水にさらした場合は40%除去することができます。※12
しかし、前述の通り、ほうれん草は茹ですぎると栄養が流出し、味も落ちるので茹ですぎには注意しましょう。
電子レンジの加熱だけでは、アクの素となるシュウ酸を取り除くのが難しいため、ほうれん草は鍋で茹でる事をおすすめします。※13
茹でる手間を省きたいという方には、冷凍ほうれん草が便利です。
冷凍ほうれん草は、あらかじめ湯通ししてあるので、下茹でせずにそのまま料理に使うことができ、手軽に調理が可能です。
※参照12/女子栄養大学栄養のなるほど実験室|調理によって栄養はどう変わるか|監修:吉田 企世子|P213
※参照13/東京都保健医療局 電子レンジで加熱調理すると、電子レンジの電磁波がビタミンなどの栄養素を破壊すると聞きましたが、本当ですか。【食品安全FAQ】
ほうれん草は、害虫被害や病気が発生しやすいので、それらを防ぐために栽培過程で農薬が使われることがあります。
厚生労働省は食品安全委員会が安全と評価した量の範囲で残留基準を設定し、基準値を超える農薬が検出された食品の流通を禁止しています。※14
基準値は、人が一生毎日食べ続けても健康への悪影響がない量を元に決められており、1つの農薬を複数の農産物から摂取することを想定しているため、基準値を超えた食品を1つ食べたとしても、全体として一日摂取許容量(ADI)を超えなければ心配する必要はありません。
しかし、ほうれん草の残留農薬がどうしても気になるという時は、切ってから茹でる方法がベストです。
切った断面から農薬がお湯に溶け出し、残留農薬を減らすことができますよ。
※参照14/厚生労働省|食品中の残留農薬等
■残留農薬を減らすほうれん草の茹で方
①ボウルに水を溜め、ほうれん草を4~5分つけておきます(流水にあてておくと更に効果的です)。
②ほうれん草を振り洗いし、水を数回取り替えます。
③ほうれん草をお好みの大きさに切り分けます。
④沸騰したお湯に切ったほうれん草を入れて40~1分程茹でます。
⑤茹で上がったら、冷水につけて水気を切ります。
上記の下ごしらえを行えば、ほうれん草に含まれる残留農薬やシュウ酸、ダイオキシンなどの有害物質をかなり取り除くことができます。※15
しかし、茹ですぎるとビタミンCなどの栄養素が流出しやすくなるので茹で時間は短めにしましょう。
※参照15/健康倶楽部|健康な体のために知って得する野菜の話
ほうれん草を食べると口や歯がキシキシすると感じたことはありませんか?
実はこの歯のきしみの原因は、シュウ酸にあります。
ほうれん草に含まれるシュウ酸が口腔内のカルシウムと結合しシュウ酸カルシウムという物質に変化し、口に不快感を及ぼします。
シラスやかつおぶしなどのカルシウムを含む食材と和えることで、シュウ酸とカルシウムが結合され、歯のきしみを軽減してくれます。※16
是非試してみてくださいね!
※参照16/医療法人社団港成会馬車道アイランドタワー歯科|ほうれん草を食べると歯がきしむのは何故?
新鮮なほうれん草を選ぶ際には、葉が鮮やかな緑色で、厚みがありみずみずしいものを選びましょう。
根元がしっかりしているものは新鮮です。
また、葉に変色や傷がないものを選ぶことも大切なポイントです。
東洋種のほうれん草は、葉が細長く、柔らかいのが特徴です。
根元は濃い赤色をしています。
クセが少なく、サラダやおひたしに最適です。
西洋種のほうれん草は、葉が厚く、丸い形をしています。
加熱しても形が崩れにくく、炒め物や煮込み料理に向いています。
交配種は、東洋種と西洋種の特徴を兼ね備えた品種です。
用途が広く、さまざまな料理に使いやすいのが魅力です。
冬の時期になると葉が縮み、厚みのある寒締めほうれん草(ちぢみほうれん草)が流通します。
あえて寒風にさらすことで糖分やビタミン、ミネラルを蓄え、普通のほうれん草よりも甘みが増します。
また、寒締めほうれん草にはルテインという栄養成分が含まれています。
ルテインは、目のビタミンとも呼ばれており、強力な抗酸化・抗炎症成分で、ブルーライトの吸収能力を持っています。※17
寒締めほうれん草は柔らかく火が通りやすいので、30秒程度湯通しすれば美味しく食べることができますよ。
※参照17/JA新いわて|寒じめほうれんそう
サラダほうれん草は、品種改良によってアクの素になるシュウ酸が少なくなったもので、生でもやわらかく美味しく食べることができるほうれん草です。
サラダほうれん草の上に、カリカリに焼いたベーコンを載せて、粉チーズとシーザードレッシングをかけるととても美味しいので是非試してみてくださいね!
ほうれん草は、冷蔵庫の野菜室で立てて保存しましょう。
ほうれん草の葉は柔らかいため、傷つくとそこから酸化が始まり劣化しやすくなります。
そのため、他の野菜と重ならないように、立てて保存してください。
さらには、湿らせたキッチンペーパーで包み、ビニール袋に入れて保存すると鮮度を保ちやすくなります。
野菜室で約1週間保存できます。
冷凍ほうれん草は、一度茹でてから冷凍すると、使いやすくなります。
小分けにしてラップに包んで保存すると、必要な分だけ使えるため便利です。
自分で下ごしらえした冷凍ほうれん草の場合は、1カ月程度で使い切るようにしましょう。
ほうれん草は、豊富な栄養素を含み、多くの健康効果をもたらします。
栄養を効率よく摂取するための適切な調理方法や保存方法を実践することで、ほうれん草の栄養をより効率よく摂取できますよ。
栄養豊富なほうれん草を活用して、バランスの取れた食生活を送りましょう!